行動生態学の発展
動物の行動の研究にもまったく新しい局面を切り開いた。 それまでの動物の行動に対する研究は、その習性が種の繁栄にとってどのように役にたつかという観点から論じられ、同じ種であればどの個体も基本的には同じ行動をとるものと考えられてきた。 しかし、血縁淘汰説が同種の個体同士は必ずしも協力しているのではなく、むしろ最も激しく生存競争をしている競争相手であると示したことにより、個体の行動が個々の個体にとってどのような意味があるかが考えられるようになった。たとえば性淘汰説では雄と雌ではそれぞれに最適な戦略は違うのではないか、といった分析がなされるようになった。そしてこれまで見逃されて来た多くの現象が明らかになってきた。
代替生活史戦略(Alternative strategy)の存在
ある種のハチでは、地下で蛹になり、羽化して地上にでる。この時、雄が先に羽化して地面に縄張りを作る。そしてその縄張り内から羽化してきた雌バチと交尾する。ほとんどの雌バチは地下から出たところで雄バチに捕まる. しかし、雄バチの目を逃れる雌バチが少数ながらおり、彼女らは次に花を訪れる。そこには先の縄張り作りの競争に負け、縄張りを作れない雄バチがいて、彼らは花に縄張りを作っている。つまり地面に縄張りを作れない場合は、代わりに雌の2番目の訪問先である花で縄張りを作るという代替作戦を持っているわけである。
このように、ほとんど融通が効かないとされてきた本能行動の中にも、主たる戦術が失敗したときの代替案が存在する事があきらかになってきた。このような行動はそれまでは例外やエラーとして無視されていたが、行動の意味を個体の視点から考えることで、例外ではなく有意義な行動であることが発見されたのである。
真社会性の発見
社会性動物の定義はそれまでは漠然としていた。しかし働きバチのような生殖をしない階級の重要性が認められた事で、社会性昆虫に見られるような繁殖をしない階級の存在するものを真社会性生物というようになった。真社会性を生む仕組みの解明は、それ以外の真社会性動物発見への方向性を示し、アブラムシや哺乳類ではハダカデバネズミ、甲殻類ではテッポウエビから真社会性のものが発見された。
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子殺しの発見
インドに生息するハヌマンラングールという猿は、雄が多数の雌からなる群れを維持する。雄は成長すると群れを離れ、やがて力をつけると、群れをもつ雄と戦う。群れの雄を倒すと、その群れの雌と交尾をすることができるようになる。ところがこの群れ雄交代の時に、新しい雄が、群れの雌が育てている子供を食い殺すことが観察された。 これはあまりにも衝撃的な行動であることから、当初は発見自体が疑問視されたが、同じようなハレム制を持つライオンでも、同様の行動が観察されたことと、社会生物学が受容されたことによってようやく認知されるにいたった。雄にとって、乗っ取った直後の群れにいるのは前の群れ雄の子であって血縁関係はない。しかも、子を育てている限りは雌は発情しないので繁殖できない。ハヌマンラングールにおいて雄が群れ雄の地位を維持できる期間は短いので、前の群れ雄の血を引く子供の独り立ちを気長に待つよりも、すみやかに子を殺し、雌の発情を促す行為の方が適応的である。レンカクのような生物ではメスも子殺しをする。
互恵的利他主義
1971年にロバート・トリヴァースは血縁関係の無い個体間でどのようなときに利他的行動が進化するかを論じた。後にゲーム理論が適用され洗練された。ロバート・アクセルロッドやマーティン・ノヴァクにより政治学にも応用されている。
親による子への投資、親子間の利害対立、兄弟間の利害対立
ロバート・トリヴァースは親の子育て行動を経済学の投資、利益、コストという概念を用いて説明できることを示した。親は自分の持つ有限資源(寿命、エサなど)をどのように自分の生存と子孫を残す努力へ振り分けるか常に判断を迫られている。つまり最も効率よく振り分けできた個体が繁栄する。親は獲得したエサを自分で食べるか、子に与えるか、自己の利益を最大化できる方を選ばなくてはならない。また子にとっては自分が親から与えられる子育ての労力は100%有意義であるが、50%しか遺伝子を共有していない兄妹たちへの子育てはその半分の価値しか持たない。鳥類に多く見られる「兄による弟殺し」は、兄弟間の対立であると同時に、親が予備として子を多めに産んで、第一子が上手く育ちそうなら弟を殺させるという、親子間の利害対立が原因だと考えられている。